慰安婦運動をめぐる議論が大変、混乱しています。私から口にするのも慎重にならざるを得ない話題です。
結論から申し上げますと、慰安婦運動の大義は堅く守られなければなりません。慰安婦運動30年の歴史は、人間の尊厳の保護と女性人権、平和に向けた足取りでした。人類普遍の価値を実現しようとする崇高な意志が損なわれてはなりません。
金学順(キム・ハクスン)ハルモ二の歴史的な証言から慰安婦運動は始まりました。被害者自らが沈黙の壁を打ち破って「自分が生きている証拠だ」と叫び、街や法廷で、また国内や国際社会に向けて被害の惨状を発信して、正義に基づく解決を呼びかけました。
戦争中に行われた女性に対する残酷な性暴力犯罪が世界に知らされ、韓日間の問題を超えて人類普遍の人権と平和の問題へと議論が広がりました。
世界各地にいる戦時性犯罪による被害者たちに大きな勇気を与え、国連をはじめとする国際社会の共感と支持を得て、世界的な女性人権運動の象徴となりました。慰安婦ハルモ二一人ひとりが運動の主体となり、堂々と勇気のある行動を示したからこそのことでした。
今では多くの方々がお亡くなりになり、慰安婦ハルモ二は17人だけがご存命となりました。どなたも慰安婦の真実を解明する生き証人の方々です。
とりわけ、李容洙(イ・ヨンス)ハルモ二は慰安婦運動の歴史といえる方です。慰安婦問題を世界的問題へと発展させることに多大な役割を果たされました。米下院で初めて慰安婦問題を生々しく証言することにより、日本政府の謝罪と歴史における責任について触れた慰安婦決議案の採択に決定的な貢献をされました。
フランス議会でも初めて証言を行い、90歳の高齢にもかかわらず慰安婦関連資料のユネスコ登録を呼びかける活動も展開されました。
われわれは、慰安婦ハルモ二がいない慰安婦運動は考えられません。慰安婦ハルモ二は、悲惨だった人生について証言し、慰安婦運動を引っ張ってこられたことだけでも、誰かに認められることを必要としない、尊厳そのものです。
慰安婦運動は民間の自主的な参加と連帯によって成長してきた運動です。被害者ハルモ二は自ら女性人権運動家となり、世界のいたるところの戦時性暴力被害者と手を繋ぎました。市民社会の多くの活動家がそれに連帯し、市民たちも力を合わせました。若い生徒たちも水曜集会に参加し、慰安婦問題を隠された過去にしないために努力しました。
30年間持続的に被害者と活動家、市民たちが一緒に連帯して力を合わせた結果、慰安婦運動は世界史に残る人権運動として位置づけられました。それは決して否定したり非難することのできない歴史です。
市民運動は市民意識と共に発展してきました。この度の問題は、市民団体の活動方法やあり方を顧みる契機となりました。
しかし、一部で慰安婦運動そのものを否定して運動の大義を損なおうとする試みがみられるのは、望ましくありません。それは被害者ハルモ二の尊厳と名誉まで崩してしまうことです。非人道的な戦争犯罪を告発し、女性人権の価値を擁護するために献身した慰安婦運動の正当性に対する根本的な挑戦です。
慰安婦運動は今でも現在進行形です。被害者たちの傷は完全に癒されておらず、真の謝罪と和解に至っていません。歴史の真実が余すことなく明かされ記録されることで、これから成長していく世代や子孫たちに歴史の教訓として刻まれなければなりません。
「雨降って地固まる」という言葉があります。この度の問題と試練が、慰安婦運動を発展的に昇華させる契機になることを期待しています。とくに政府は今回の問題をきっかけに寄付金の統合管理システムを構築し、寄付金または支援金の募金活動における透明性を抜本的に強化していきます。自分が出した寄付金や支援金がどのように使用されているかがしっかり把握できれば、国民たちの善意が正しく使われるようになり、寄付文化も成熟していくことでしょう。
政府や自治体からの補助金も透明に管理していきます。各市民団体も共に努力してくださることをお願いいたします。国民の皆様におかれましても、市民運動の発展に向けて前向きな議論がなされるよう、知恵を出し合っていただくことをお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。